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待機児童問題の解決が「難しい」理由

保育 待機児童
インターネットを通じて発言された「保育園落ちた日本死ね!!!」というタイトルのブログ記事。これらの動きで、解決が「難しい」とされる待機児童問題は、どのように展開していくのでしょうか。

問題の本質は「保育士の処遇改善」

■待機児童問題が改めて注目された出来事

2016年2月中旬、ある幼い子どもを持つ母親がインターネットを通じて発言しました。「保育園落ちた日本死ね!!!」というタイトルのブログ記事です。この乱暴ながらも、子どもを育てる親が直面する問題を強く訴える主張がきっかけで「待機児童問題」が改めて論じられ、翌3月には政府が緊急対策を打ち出すまでの流れができました。さらに4月には政府の「一億総活躍国民会議」で来年度から保育士給与を引き上げる方針が明らかにされました。これらの動きで、解決が「難しい」とされる待機児童問題は、どのように展開していくのでしょうか。

■多くの子どもが「保育園に入れない」状況

待機児童とは何か、を改めて説明します。認可保育所等の保育施設に入所を希望し、保護者が申請をしているのに、施設が不足していたり満員だったりして「順番待ち」の状態になってしまっている子どもを「待機児童」と呼びます。「保育園落ちた」ブログの投稿者の方も、育児休暇から仕事に復帰しようと保育園に入所申請をして、自治体から「不承諾」の通知を受け取り「どうすんだよ会社やめなくちゃならねーだろ」と怒りをぶつけたのです。

■保育所が増えているのに待機児童は増加

保育所や保育所の定員は、実は増えています。2015年の厚生労働省の取りまとめによると、保育所等の定員は247万人で、前年と比較して13万9千人、増加しています。して、子どもの数は減っています。そうなると「保育施設に入れない子ども=待機児童」は減る、と思われるのですが、現実には増えてしまっています。同じ取りまとめによると待機児童のいる市区町村は前年から36増加して374となりました。待機児童数は2万3167人で前年比1796人の増加となりました。

 ■待機児童問題は単に「保育施設を増やして解決」とはいかない

待機児童問題の背景には「共働き世帯」の増加があります。従来の「女性は家庭で子育て」という形ではなく、夫婦で働きながら子どもを育てるライフスタイルが当たり前となっています。そういったライフスタイルの浸透も関係してか、待機児童問題は都市部に集中しています。保育所の定員を増やしても、ある地域では「定員割れ」が起こり、ある地域では待機児童が溢れる、というように地域で差があるのも特徴です。都市部では新たに保育施設を作ろうとしても地価が高い、住宅等の建物が密集しているなどの理由から保育施設に適した土地や建物を確保することが困難、ということもあり、ますます地域差が広がる要因となっています。「入れない子どもがいるなら保育施設を増やせばいい」と単純にいえない背景があるのです。

■待機児童は「もっといる」のが現実

2015年にまとめられた待機児童の数は全国で2万3167人、というのはすでにお伝えしました。しかし、この数字には「からくり」があり、実際に保育園に入ることができない子どもはもっといるのが現実です。待機児童というときには「認可保育所」等の順番を待っている子ども、という定義があります。認可保育所は、国の基準によって面積や保育士の数を定め、自治体の認可を受けている施設のことです。つまり「認可外保育施設」を利用して待機している児童は、数に入っていません。「隠れ待機児童」と呼ばれる存在です。

■待機児童解消はしっかりとした実態把握から

白い服の女の子2

2016年3月には政府が「隠れ待機児童」が全国で4万9153人に上る(2015年4月時点)という集計結果を明らかにしました。「認可保育園の定義」のみで数えた2万3167人と合わせると7万人を超えます。さらに、この中には認可保育施設に子どもを入れることができず育児休業を延長した場合は含まれていません。待機児童の実態を正確に把握することさえできていない、というのが現実なのです。政府は「待機児童解消は取り組むべき最重要課題」としていますし、スピーディーに問題解決を目指していくのは当然として、よりきめ細かく現状を把握することが必要です。「数え方が違うので」「自治体によって違うので」と、問題の本質が掴めていないようなことだと、対策の焦点が合わないという事態になります。そのような無駄がないようにしていくべきですね。

■最も深刻なのは「保育士不足」

これだけの待機児童がいて、困っている保護者がいる。深刻な問題です。政府の対策として「1人の保育士が見る子どもの数」の基準を緩和することなどが打ち出されています。つまり、保育士の人数が少なくても多くの子どもを預かることができるように、という内容です。しかし、これは子どもを「詰め込む」方向へいく対策なのではないか、保育の質が低下するのではないかと心配されています。とにかく保育の現場では「人手不足」です。保育士が足りず、保育士にかかる負担が大きくなるのは避けなければなりません。しかし、保育士不足は慢性化していて、深刻な問題です。

■保育士の「給与」に問題あり

保育士が足りないのは、資格を持っている人がいない、というわけではありません。保育士資格を所持しているけれども保育士ではない「潜在保育士」が全国で60万人以上いるといわれています。保育士を養成する学校等を卒業した有資格者のうち、保育士として働くのは約半数というデータもあります。なぜ保育士として働いていないのか。それは保育士の待遇に問題があるからです。保育士は国家資格であり、仕事内容も子どもと接するというやりがいのあるものです。しかし、それに見合った給与を受け取っていない、という声が保育士からは聞かれます。女性保育士の平均月給は26万8000円で、全産業の女性労働者の平均31万1000円よりも4万円以上、低いのが現状です。

■政府による保育士待遇改善の施策

政府が2016年4月に「一億総活躍国民会議」で発表したのは、保育士確保のため、この処遇を改善するという方針です。2017年度から保育士の給与は月額2%、約6000円から1万円、引き上げられます。「ベテラン」の保育士には手厚い給与を、と最高で月額4万円上がる調整もしていきます。定期昇給を導入する保育園には助成金を出すことも決めました。このように、政府が保育士の待遇改善を打ち出したことに対し「待遇改善は評価できるが、その数字には不満」という声も上がっています。

■保育の現場を知る立場からの声とは

政府の保育士待遇改善策に対して「たった2%では、待遇に満足できず去った保育士は現場に戻ってこない」という意見が多く聞かれます。保育の現場を知る側からの訴えは切実です。保育は子どもの安全を守り、成長を促す、未来を支える重要な仕事です。希望に溢れている一方、責任も重く、業務は多忙で肉体的にも精神的にもタフさが要求される場合が多いのです。いっそうの待遇改善、人材の確保は急務であり、保育現場の現状をよく見て各施策を決定することが、政府には求められます。

■待機児童問題への取り組みに望まれること

待機児童問題の解決には、さまざまな「難しさ」があり、とくに都市部での待機児童の状況は深刻さを増しています。政府は課題に対応しているのですが、保育施設へ子どもを預けるという「需要」に対して追いついていないのが現実のようです。とくに保育士の待遇については、より迅速に、より手厚く改善し、人材を確保する必要があります。給与を上げるのはもちろんのこと、多様な働き方や地域性も踏まえて、働きやすい職場、働き続けたい職場を保育の業界全体で整える仕組み作りが必要です。実際に保育現場で働く人達は、仕事の喜びややりがいをおおいに感じている人もいますが、それ以上に厳しさを感じている人もいます。未来を担う子ども達を育てる現場に、夢を持って入ってくる人が「疲れ切って」しまわないように、保育士にはワークライフバランスも整った労働環境を用意することが望まれます。

 

 

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