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保育士の給料は低い?上げるための方法とは?

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保育園の待機児童の増加や保育園不足などの問題とともに、深刻な保育士不足が明るみに出ました。この保育士不足の大きな理由のひとつとされるのが保育士の給料の低さです。
なぜ、子どもたちの安全を守り、健やかな成長をサポートする大切な仕事である保育士の給与は低いのでしょうか。今回は、実際の保育士の給与水準や給与が低い原因を分析し、国や地方自治体が行っている保育士の給与の引き上げ政策や取り組みの現状と今後の見通しなどをご紹介します。

今回のポイント

保育士の給与水準は全職種の平均と変わらないものの、昇給率が低い

スキルアップとともに、給与待遇も改善されるキャリアアップ研修が大切

借り上げ社宅制度など、地方自治体でもさまざまな待遇改善の政策が実施されている

保育士の平均年収はどのくらい?

給与の額と仕事量が見合っていないと言われる保育士ですが、実際には平均年収はどのくらいなのでしょうか。

保育士の給与はどれくらい?

厚生労働省の賃金構造基本統計調査(2017年)によると、保育士の平均年収は36.1歳で平均342万円です。2011年に平均328万円であった平均年収は年々増加傾向にあります。ただし、企業規模が10人以下の保育所の統計はないため、実際の平均額はこれよりも下がる可能性があります。

次に、保育士の給与の平均年収について、年齢別や運営母体別、性別、地域別にみてみましょう。

年齢別の平均年収

保育士の年齢別の平均年収(女性)は、厚生労働省の賃金構造基本統計調査(2017年)によると、次のとおりです。年齢とともに上昇していきますが、昇給率は低いようです。

年齢 平均年収(昇給率)
20~24歳 2,866,300円
25~29歳 3,233,700円(+12.8%)
30~34歳 3,375,600円(+4.4%)
35~39歳 3,408,400円(+1.0%)
40~44歳 3,624,400円(+6.3%)
45~49歳 3,713,600円(+2.5%)
50~54歳 3,889,200円(+4.7%)
55~59歳 4,007,600円(+3.0%)
60~64歳 4,274,900円(+6.7%)

公立と私立の平均年収比較

保育士の平均年収は、公立と私立では大きな格差があります。私立よりも公立の方がかなり高く、退職金などの支給も考慮すれば、生涯年収に大きな差が生じます。また、育休・産休制度なども公立の方が取得しやすい傾向があります。

公立の保育園に勤務する保育士は一般行政職の公務員になるため、全国の公立保育士の年収に関する統計データはありません。一例として、東京都練馬区が発表した調査結果(2017年練馬区人事行政の運営等の状況の公表)によると、練馬区立の保育園に勤務する保育士の平均年収は44歳で678万円となっています。

私立保育園の平均年収342万円と比較すると2倍近くの差があり、平均年齢も高いことから離職率が低いこともわかります。

女性保育士と男性保育士の平均年収比較

最近は、男性保育士も増えています。女性保育士と男性保育士の平均年収を比較してみます。厚生労働省の賃金構造基本統計調査(2017年)によると、女性保育士と男性保育士の平均年収は、次のとおりです。他の職種よりも男性と女性にはあまり格差はない職種のようです。

女性 36.1歳 339万円
男性 32.4歳 377万円

保育士の平均賞与

保育士の平均賞与は、厚生労働省の賃金構造基本統計調査(2017年)によると、66万円です。男女別でみると女性が66万円、男性が72万円です。男性の賞与の方が高いにもかかわらず、保育士の平均賞与と女性の平均賞与が同じになっていることから、男性の保育士がいかに少ないかがわかります。

都道府県の平均年収(地方と首都圏)

保育士の平均年収は、地域によっても大きく異なります。厚生労働省の賃金構造基本統計調査(2017年)によると、最も平均年収が高いのは京都府の404万円です。

最も低いのは281万円の島根県です。東京都の平均年収は398万円、神奈川県が359万円と平均を上回っていますが、首都圏でも千葉県や埼玉県は平均を下回っています。全国で平均を上回っているのは、11都道府県しかありません。

保育士の平均年収は低いのか

他の職種の比較した場合、保育士の平均年収はどの程度なのでしょうか?

給与水準をみてみよう

2017年の統計では、保育士の全国平均の月給は22.9万円で年間賞与が66.25万円、手取りが19.57万で年収換算すると約342.1万円、となり、女性全体の平均年収である345.5万円とあまり変わりません。

ただし保育士の業務や残業時間、男性保育士の給与などさまざまな面で比べてみた場合、決して同じ金額とは言えないようです。

保育士は、早朝から夕方過ぎまで勤務することが多く、延長保育がある場合は9時近くまで残業が必要になることもあります。厚生労働省の調査では月平均の残業時間は4時間とされていますが、実際には連絡帳や日誌などの事務作業や翌日の行事の準備など、子どもの帰宅後にしかできない仕事も多く、サービス残業が常態化している園もあります

また、一日中、子どもたち一人ひとりの安全に気を遣って過ごさなくてはならないため、休憩時間も他業種と比べて短い傾向にあります。さらに、保護者と円滑にコミュニケーションを取ることも求められ、良好な関係を築く努力も必要です。

家に仕事を持ち帰ると残業代が出ない園がほとんどであることも踏まえると、保育士の仕事は、肉体的にも精神的にも大変な仕事であり、現在の給与水準は仕事内容や労働時間と見合っているとは言えません。

一方、男性の保育士の平均年収は30歳時点で、全体の平均年収より60万円ほど低い水準です。また、おむつの履き替えを嫌がる保護者がいることから、雇ってもらえないところも多く、保育士以外のスキルを求められることも多いため、他職種に比べて経済的に見合うとは言えないでしょう。

保育士の給料はなぜ低いの?

なぜ、保育士の給料は低いのでしょうか。男性が働き女性が家を守るという時代は、子どもを保育するという仕事は、家庭で母親や祖母などの女性が中心となって行うものでした。

母親が仕事をしていても、祖父母や親族、近所の知り合いが子どもの面倒を見てくれることが多く、昔の保育園の保育の質が低かったことも相まって、わざわざお金を支払ってまで他人に子どもを預けることに抵抗があったようです。

また、堀江貴文氏が「なんで保育士の給料は低いと思う?」という記事に対して、「誰でもできる仕事だからです」とTwitterでコメントしたように、一般の人から見れば保育士の仕事は「ただ、子どもと遊んでいるだけ」という印象があります。

実際の保育士の仕事の複雑さや大変さが、待機児童の増加や保育士不足の問題が明るみに出るまで一般の人に知られてこなかったのも理由のひとつでしょう。

ほかにも、保育園自体の収入は国の自治体の補助金と保護者の保育料から賄われており、園児の数も法律によって制限されているため、自助努力で園児数を増やしたり、保育料を値上げするのにも限界があります。そのため、保育士の給与水準は低く、仕事に見合った給与が払われるケースは稀と言えます。

保育士の給与を上げるための取り組み

現在、保育士不足を解消するために、給与水準の引き上げや給与アップにつながる研修制度の実施など、国や地方自治体による保育士の給与待遇改善の取り組みが行われています。

キャリアアップ研修

キャリアアップ研修は、今まで曖昧だった保育士のキャリアの指針を示し、所定の研修を受講することで、役職や給与などの待遇の改善が受けられる制度です。2017年4月に厚生労働省が、経験7年以上の保育士が所定の経験を修了し、先手門的技能を習得することでキャリアアップを行うことを目的とした研修の概要とガイドラインを発表しました。

キャリアアップ研修の研修分野は、乳児保育、幼児教育、障害児保育、食育・アレルギー、保健衛生・安全対策、保護者支援、子育て支援の6つの専門的研修分野とマネジメント研修、保育実践研修で構成されています。

ひとつの分野について15時間以上の研修が必要で、地方自治体や地方自治体が指定した事業者により実施されます。研修の修了者には、修了した研修分野ごとに修了証が交付されます。修了証は全国で有効で期限の定めもありません。

キャリアアップ研修を受講した保育士には、経験年数と受講した研修分野や修了数に応じて新しい役職が設けられています。新役職には、役職別に要件が設けられており、発令されると給与補助が受けられます。キャリアアップ研修を受講することで専門的な知識を深めるとともにスキルアップでき、さらに新しい役職につくことで給与待遇も改善されます。

例えば、経験年数概ね7年以上で職務分野別リーダーを経験した保育士が、マネジメントと3つ以上の分野の研修を修了した後、副主任保育士としての発令を受けると月4万円の給与補助を受けることができます。

新設される専門リーダーも同様に月4万円の給与補助を受けることができますが、こちらは経験年数概ね7年以上で職務分野別リーダーを経験しており、4つ以上の分野の研修を修了した後、専門リーダーの発令を受ける必要があります。

勤続年数が3年以上あれば、担当する職務分野の研修を修了し、職務分野別リーダーの発令を受けることで月5,000円の給与補助を受けることができます。

2兆円政策パッケージ

2017年12月に閣議決定された政府の新しい政策方針「2兆円政策パッケージ」によると、2019年10月からの消費税10%引き上げによる増収分を財源に、2019年4月から保育士の給与が月額1%(月3,000円相当)引き上げられることになりました。

資格による年収アップ

国や地方自治体の制作による給与処遇の改善のほか、保育に関連する資格を取得することで年収アップをめざすこともできます。例えば「社会福祉士」の資格を取得すれば、保護者や家庭の悩みの相談を受けた場合は、児童福祉士などを介さずに対処することができます。

カウンセリング技術なども仕事に活かせるため、管理職をめざしたい方は特におすすめの資格です。「臨床発達心理士」は、発達障害が疑われる子どもの保育など、保育現場ですぐに活かせる資格です。

その他、少人数保育についての知識を深めることができ、保育室の開業をめざすこともできる「チャイルドマインダー」は少人数保育のスペシャリストです。イギリス発祥の資格で、夜の時間帯に子どもを預かるサービスによる年収アップが見込めます。

人気のリトミックを指導できる「リトミック指導員」は子ども目線の指導がメインで、保育園では専門講師として雇われることが多くあります。そのため、通常の保育士よりも給料が高くなるケースが多いようです。近年は英語への関心が高まっており、英語リトミックが行われている園もあります。

制度による給与のアップも!

計算

国の政策による給与水準の引き上げやキャリアアップ制度による給与待遇の改善のほか、地方自治体でも、住宅補助などのさまざまな待遇改善が行われています。

借り上げ社宅制度

待遇改善の代表的な制度が借り上げ社宅制度(住宅支援制度)です。借り上げ社宅制度とは、東京都や千葉県など、地方から上京して働く保育士のために、保育園の運営法人が借り上げた社宅の家賃を全額または一部負担する制度です。

法人が給与に手当として加算する住宅手当は税金や社会保険料の標準報酬額の対象になり、保育士に負担がかかります。しかし、借り上げ社宅制度の場合は、住宅手当に比べて自己負担以外の負担がかからないというメリットがあります。
基本的に1都3県では8万2,000円が補助され、保育士は全額補助もしくは1割負担の場合が多いです。

地方自治体の特別手当

地方自治体によっては、法人から支払われる正社員の給与とは別に、保育士に特別手当を支給しています。例えば、千葉県の松戸市では、保育士の勤務年数に応じて。1~11年目の人は1ヶ月当たり4万5,000円を支給し、その後19年目までは年次ごとに約3,000円が増額されます。そして、20年以上のベテランには上限の7万2,000円が支給されます。

給与上乗せのほか、新卒保育士に対する家賃補助や就職費用の負担、保育士をめざす学生への奨学金など、保育士を確保するためにさまざまな待遇改善を実施しています。このような施策は、今後は首都圏だけでなく地方の自治体に広がっていくと予想されています。

おわりに
保育士不足が問題となっていますが、実際には保育士の資格を取得していても保育士として勤務していない潜在保育士の数は70万人もいると言われており、潜在保育士が働きたくなる環境を作ることができれば早期解決への糸口になるかもしれません。
また、保育園のニーズの高まりとともに、保育士確保に向けた国や地方自治体の待遇改善の取り組みは今後も積極的に行われていくと考えられ、引き続き保育士の待遇や労働環境の改善が図られていくことでしょう。

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参考資料

保育士キャリアアップ研修の概要
https://www.hyogo-hoikukyokai.or.jp/pdf/carrieup/carrieup_01gaiyou.pdf

保育士等に関する関係資料
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/s.1_3.pdf

新しい系税政策パッケージ
http://www5.cao.go.jp/keizai1/package/20171208_package.pdf

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