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保育士が職場を選ぶ時のポイントとは?保育園の多様化を確認しておこう

読了の目安:約5分
待機児童問題の解消や保育ニーズの変化に伴い、認定こども園や特色のある教育を行う保育園など、保育園は多様化しています。
しかしその一方、保育士不足や保育士の離職率の高さは解消されていません。

保育士として同じ職場で長く働き続けるためには、職場を選ぶ時にしっかりと検討することが重要です。
そこで今回は「保育園の職場を選ぶ時のポイント」を、保育園の種類とともにご紹介します。
ぜひ、参考にしてより良い職場を選んでください。

今回のポイント

保育士を選ぶ時には「どんな保育園で働きたいか」を明確にして優先順位をつけましょう

多様化する保育園の違いを知り、正しく理解しましょう

宗教の教えに基づく保育や、モンテッソーリ教育などの保育方針や保育内容を把握しましょう

保育士の職場の選び方は重要

保育士は、小学生のなりたい職業ランキングで毎年上位にあがっています。
ところが、子ども好きな人がわざわざ専門の資格を取得し晴れて保育園に就職しても、わずか1~3年で早期離職する人が多いのが現状です。

保育士の離職率が高い理由

保育士の離職率が高くなるのは、次のような理由があるからです。

結婚・妊娠

結婚・妊娠により、仕事と家庭の両立が困難になってしまい、ライフスタイルの変化から退職する人が多いようです。

給与

平成28年度の保育士の平均年収は約327万円です。毎年少しずつ改善してきてはいるものの、さらなる待遇改善策が必須です。

人間関係

同僚や上司と性格が合わず人間関係が悪化してしまった、女性特有の派閥ができ、そのために職場の中で孤立してしまい退職、というパターンもあります。また保護者からの理不尽なクレームに対応しなければいけない、良好な関係を築けない、といったことで離職へつながるケースがあります。

労働時間・休日

残業が多く、休日が少ない、サービス残業や持ち帰り残業も多いといった長時間労働は深刻です。保育士は、子どもたちが帰ったあとの作業や雑務も多く、持ち帰り残業が発生する確率が高くなっているようです。

保育士の離職の原因

誰でも就職する時には、ずっと同じ職場で働き続けたいと願って就職します。
保育士の退職理由は、給与の低さや人間関係の悪化などさまざまですが、多くの原因として職場を選ぶ時のポイントを理解していないことがあります。

現代の保育園は多様化しています。それぞれの園の教育方針やカリキュラム、労働環境などをよく理解した上で、自分に合った職場を選びましょう。

 

 

重要なのは「どんな保育園で働きたいか」を明確にすること

やりがいを感じながら同じ職場で働き続けるためには、保育園を選ぶ際に、「どんな保育園で働きたいか」を明確にしましょう。

たとえば子どもに対する早期教育や情緒の発達などの方針、インターナショナルスクールなどの目的別保育園、またキリスト教や仏教などをベースにした園など、園の保育方針や運営体制など、自分が保育士の仕事をする上で、どんな職場を望むのかを明確にしておきましょう。

さらに給与や通勤時間、通勤方法、福利厚生面など、自分にとっての条件面をまとめて優先順位をつけていきましょう。
項目別にチェックするべきポイントは、次のとおりです。

1.公立か私立か

公立と私立では、平均年収に大きな格差があります。
公立は地方公務員として採用されるので、給与は各自治体の給与基準に準拠します。勤務年数に応じて毎年昇給していきます。

退職金も多く、育児休暇や介護休暇も私立に比べて取得しやすいので、子育てをしたり、介護をしたりしながらでも、長く安定して働き続けることができます。
しかし、最近では保育園の民営化が進み、公立の保育園の数が少なくなってきており、ますます狭き門となっています。

2.園の方針

園の保育方針・保育方法がどのような内容であるかを確認することは、とても重要です。
宗教教育や早期幼児教育、音楽教育に力を入れていたり、裸足保育など独自の保育方法を推奨していたりするなど、園によって保育方針・保育方法は異なります。

園のパンフレットやホームページなどを閲覧して、自分の目指したい保育のあり方と合っているかどうかを事前に調べておきしょう。
また、行事や発表会が多い保育園は、準備やイベントに対してやりがいや楽しさを感じられる人には向いていると言えるでしょう。

3.通勤距離や通勤方法

通勤時間が長かったり、満員電車に乗らなければいけなかったり、電車・バスの本数が少なかったり、駅から遠いなど、毎日の通勤に負担があると疲れがたまり、やがて健康にも支障が出てくることがあるかもしれません。

「マイカー通勤ができる」、「駅から近い」など、なるべく無理なく通勤できる保育園を選びましょう。
また、自分の子どもを幼稚園や保育園に預けている場合、子どもの送迎に便利かどうか、送迎にどのぐらいの時間がかかるか、も確認しておくべきポイントです。

4.給与

いくら子どもが好きで、保育の仕事にやりがいを感じていても、給与が低かったり、残業しても残業手当が支給されなかったりすると生活が安定せず、やりがいも感じられなくなります。

給与の低さは、保育士の転職理由でも上位にあげられます。
給与の内訳(基本給+住居手当や残業手当、通勤手当など)や支給条件を求人票で確認しましょう。

最近は、ハローワークのほか、保育士専門の転職サイトや転職フェア、転職エージェントも支援してくれます。さまざまな方法で条件の良い保育園を探しましょう。

5.労働時間・有給取得率

保育士には、翌日の事前準備や保護者へのお知らせの作成、行事のための準備など、閉園後にも多くの仕事があります。
保育士が少ないと、一人にかかる負担は大きくなります。また、延長時間が長い保育園の場合は、遅番・早番があったりします。土曜日や日曜日も開園している保育園の場合は、シフト制で休日を取ることになります。

実際のシフト制の内容や残業時間数、有給休暇の日数や取りやすさなどは、求人票ではなかなかわかりづらいものです。
保育士一人に対しての子どもの人数とあわせて確認してみましょう。

6.人間関係

保育園という職場は基本的に女性が多いため、女性特有の人間関係の問題が生じる可能性もあります。
同僚保育士間での対立や嫌がらせ、園長など上司からのパワーハラスメント、保護者とのミスコミュニケーションなど、人間関係の難しさを退職理由にしている人も多いようです。

2014年の東京都保育士実態調査では、四人に一人が人間関係で退職しているという実態があります。
また、最近ではモンスターペアレンツと呼ばれる、保育士に無理難題を押し付ける保護者の存在も問題視されています。

実際の職場の雰囲気を知るために、園の見学をしてみるのもおすすめです。見学で園の日常風景を観察すれば、自分が働きやすい職場であるかどうかの判断材料となるでしょう。

多様化する保育園の種類をチェック!どんなものがあるの?

今日では、待機児童問題解消やさまざまな保育ニーズに対応するために、保育園の種類は多様化しています。

1.認可保育園

認可保育園とは、児童福祉法に基づき定められた基準を満たしており、各自治体から認可された保育園です。

認可保育園は運営に際し、国や自治体から補助を受けることができ、無認可保育園に比べると保育料が安くなるため入園待ちの待機児童が多く存在しています。
認可保育園のなかには、自治体が運営する公立保育園のほか、社会福祉法人や学校法人・宗教法人・NPO法人などが運営する私立保育園があります。

2.無認可保育園

無認可保育園は認可外保育園とも呼ばれ、児童福祉法では「認可外保育施設」と規定されています。
現在では「認可外保育施設指導監督基準」が定められており、認可外保育園の設置・運営は、自治体により厳格に指導・監督されています。

園庭がないなど、国が定めた基準を満たしていないために認可を受けられない保育園だけではなく、自由な保育を目指すためにあえて認可申請をしていない保育園もあります。
無認可保育園は、保護者が就労・介護などをしていなくても預けやすく、夜間・休日保育、早期幼児教育など、保護者のニーズに合わせた対応をしているところが多いようです。

3.認定こども園

認定こども園は、幼稚園と保育園の機能を併せ持った施設です。2006年からスタートした制度で、保育園や幼稚園とは違い内閣府の管轄となっています。

国が定めた基準を満たしていれば、都道府県から認定を受けることができます。認定こども園は、次の4つの種類に分けられます。

幼保連携型 認可幼稚園と認可保育園の施設・設備が一体的に設置・運営されている施設です。
地域の学童との交流や小学校との連携を図り、円滑な小学校への入学を目的としています。
幼稚園型 認可幼稚園を基にした施設で、保育時間の延長や、0歳児から預かるなどの機能を追加しています
保育所型 認可保育園を基にした施設で、働いていない保護者の子どもを預かるなどの機能を追加しています。
地方裁量型 幼稚園・保育園いずれも認可を受けていない施設を基にしている施設です。
都道府県の定めた基準により認定を受けられます。
4.企業内保育・院内保育

企業内保育・院内保育は、企業の従業員や医師・看護師など病院の職員が、仕事と育児の両立ができるように、会社や病院などの事業所内や隣接する場所に設けた認可外保育施設です。

運営母体は、企業や病院が直接運営する場合と、民間の保育園運営業者に委託する場合があります。
工業団地などでは、複数の企業が共同で運営している場合もあります。また、次世代育成支援対策推進法などの法律に基づき設置され、助成金を受けている施設もあります。

正規社員・職員だけでなく、非正規雇用者の子どもも利用できます。工場や病院内の施設では、365日・24時間体制で運営している場合もあります。
園庭がなかったり、施設が狭かったりといった理由から運動会・遊戯会などの大きな行事は少ないため、残業も比較的少ない傾向にあるようです。

5.プリスクール・インターナショナルスクール

英語教育が本格的に小学校で始まるなど、幼児期から英語教育に対する関心が高まってきました。
それにつれてプリスクールやインターナショナルスクールが人気となっています。これらの施設形態については明確な定義がなく、どちらも認可外保育施設となります。

ネイティブ講師とのコミュニケーションを取るため、勤務するには高い英語力が必要です。
週5日体制で運営している園もあれば、週2~3日のみ運営している園もあり、フルタイムではなくパート雇用のみの場合もありますので、事前に労働条件をしっかり確認することが大切です。

宗教的観点をもった保育園の選び方

学校法人や宗教法人が運営する園では、宗教の教えを基に保育を行っています。
最近では、認定こども園として認可されたり、企業主導型事業の助成を受けたりするなど、保育の多様化に対応した保育園が増えています。

キリスト教保育

キリスト教保育では、聖書の教えを基に保育方針や日常のスケジュール、行事などが組み立てられます。毎日、朝や食事時、終礼の際にお祈りをしたり、聖書の話をしたりします。

行事も謝肉祭や復活祭など、キリスト教のイベントが取り入れられています。遠足などで、近くの教会を訪問したりすることもあります。
その性質上、クリスマスの時期にはツリーやアドベントカレンダーを飾るだけでなく、キリスト生誕劇を園児たちが演じたりする保育園が多いようです。

仏教保育

仏教保育とは、仏教の精神を基に保育を行う保育形態です。お釈迦様や開祖の言葉、お経を通して生命の大切さを学びます。
寺の境内に園を設置するなど、お寺と一体となって運営をおこなっている保育園が多いようです。

保育室にはお釈迦さまや開祖の絵や仏壇が設置されていることが多く、お釈迦様の誕生を祝う「花まつり」やお釈迦様が悟りを開いた日に行う「成道会」などの行事があります。
座禅を組んだり、念仏を唱えたりなど、宗派によって独自の保育を行う保育園もあります。

神社保育

日本には、お寺と同様に神社の中に設置されている保育園もあります。

神社を取り囲む「鎮守の森」の豊かな自然の中で遊びながら、日本の歴史や伝統を大切にする心を育みます。

本殿に参拝するほか、七五三、節分やひな祭りなどの季節行事を行います。夏祭りや秋祭りなど、神社や地域独自の祭礼に参加して、子ども神輿をかついだり、稚児行列に参加したりすることもあります。

教育法による保育の選び方

 

保育園の中には、独自の教育思想や「オルタナティブ教育」と呼ばれる最新の教育法に基づいた保育を行っている園もあります。
その理念や特徴を理解し、自分の目指す保育と合っているか判断しましょう。

モンテッソーリ教育

モンテッソーリ教育とは、イタリアの医学博士であるマリア・モンテッソーリによって開発された教育法です。
「自立していて、有能で、責任感と他人への思いやりがあり、生涯学び続ける姿勢を持った人間を育てる」ということを教育の目的としています。

Facebookの創設者マーク・ザッカーバーグやAmazon.comの創立者、ジェフ・ベゾスが受けていた教育法としても知られています。
クラスは縦割りで、毎日「お仕事の時間」と呼ばれる活動があります。「お仕事」では、モンテッソーリ独自の教具を使用して、大人が行う日常生活をまねします。子どもたちが自分ですることを決め、自分自身で考えて選択する自発的精神が奨励されています。

レッジョ・エミリア・アプローチ

レッジョ・エミリア・アプローチとは、イタリアのレッジョ・エミリア市で発祥した近年注目を集めている教育法です。
「子どもたちそれぞれの意思や個性を尊重し、個々の感性を生かすことが最も重要である」という理念のもと、子どもの表現力やコミュニケーション能力、探究心、考える力を養う教育法を実践しています。

展覧会などの行事を、子どもたちと保育士、保護者が一体となって創り上げていく「プロジェクト活動」と、美術専門家と教育専門家が配置され、教室のミニアトリエで創作活動を行う「自由な芸術活動」、保育士と子どもの会話や活動などの様子を写真や動画、メモなどに記録して掲示する「ドキュメンテーション」の3つの特徴的な活動があります。

おわりに
今回は、保育士が保育園を選ぶ時のポイントをご紹介しました。
働く女性が増えたことや少子化に伴い、保護者が保育に求めるニーズも変化してきています。
そのためさまざまな働き方やライフスタイル、教育ニーズに合わせて、保育園自体も多様化しています。
保育園を職場として選ぶ時には、給与や待遇面だけでなく、「自分の目指す保育と合うかどうか」「長く働き続けられる仕事環境かどうか」など、さまざまな観点からしっかり検討することが大切です。
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参考資料

保育分野の現状と取組について(厚生労働省)
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/wg/hoiku/20170922/170922hoiku02.pdf

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