
はじめに
保育士になるためには、厚生労働大臣指定の「指定保育士養成施設」(つまり大学、短大、専門学校の保育学科や幼児教育コースなど)を卒業する方法と、保育士資格試験に合格する方法があります。
保育士資格試験を受ける場合にまず最初に受けるのが筆記試験です。ここでは、子どもたちの発達に関する知識や栄養学などはもちろんのこと、社会福祉の理念など哲学的なことに関する知識を見られます。筆記試験に合格してはじめて、実技試験に進むことができ、実技試験に合格すれば晴れて保育士として認められることになります
ここでは、筆記試験について詳しく見ていきましょう。
合格には
保育士資格試験の筆記試験は9科目を2日間にわたって行います。9科目とは以下の通りです。(2016年前期)
- 保育の心理学
- 保育原理
- 児童家庭福祉
- 社会福祉
- 教育原理
- 社会的養護
- 子どもの保健
- 子どもの食と栄養
- 保育実習理論
2013年より保育士資格試験の筆記試験の一部が変更となり、10科目だったものが、精神保健と小児保健を子どもの保健に統合することで9科目による試験となりました。このように、試験内容は変わることがあるので常に最新の情報を手に入れることを心がけてください。
解答はすべてマークシートによる択一式で行い、合格にはすべての科目でおおむね6割以上の正答率を残すことが必要となります。ただ、すべての科目を一度に合格する必要はありません。一度合格した科目は3年間有効なので、次の試験では合格できなかった科目だけを受験することもできます。実際、複数回の試験にわたって保育士資格の取得計画を立てている人もいますのでこの制度はうまく活用してください。
また、幼稚園教諭免許所有所は、保育の心理学と教育原理の2科目が筆記試験で免除になります。ただし、申し込みをする際の免除申請が必要となるので忘れずに行ってください。
さて、マークシート方式で合格のボーダーラインは6割と聞くとそれほど難しい試験のようには感じませんが実は違います。2014年の筆記試験の合格率は19.3%と2割にも満たないのです。ただしこれは年によって結構なばらつきがあり、2008年の試験では合格率は10.6%と極めて低くなっています。(実は2014年の19.3%は近年の合格率で見てみると高い部類に入ります)
これにはいくつかの理由が考えられます。ミソはすべての科目でそれぞれ6割以上の正答率を残さないといけないことです。経験者の話によると、保育士試験ですべての科目に手も足も出ないと人はいません。ほとんどの人が少なくとも2~3科目は合格することができますが、なにせ科目数が多いので筆記試験全体としての合格率が低くなっています。
さらに難易度による得点調整がないことも、低い合格率の原因となっているかもしれません。これは、試験で出題される問題が全部ものすごく難しいということではありません。ポイントは科目ごとの難易度の差が激しいことです。そして、その難易度の落差は年によって変わります。ある年は保育原理と子どもの保健がサービス問題であったのに対して、子どもの食と栄養学は管理栄養士試験並みの難易度だったこともあります。
全体の正答率が6割以上であれば、難しい科目や苦手な科目の部分を、簡単な科目、得意な科目で挽回することもできますが、合格ラインはあくまで9科目それぞれ6割以上の正答率。これが、なかなかのつまずきポイントになっているといえるでしょう。
対策
それでは、そのような難関な試験に向けてどのような対策をするのがいいのでしょう。経験者の多くが口をそろえて言うのが、とにかく問題を解きまくるということです。
書店にもたくさんの保育士資格試験対策本が売られていますし、試験の事務業務を行っている全国保育士養成協議会のホームページから過去の試験問題をダウンロードすることができます。もちろん、様々な通信講座があるので、それを活用するというのも選択肢の一つです。
テキストを選ぶ際に気を付けることは、最新のテキストを選ぶことです。古いテキストで勉強してしまうと、せっかくの勉強時間が無駄になってしまう可能性があります。
コツとしては、すべてを完璧にしようとしないことです。保育士試験は前にも言ったように9科目もあります。でも、それぞれの科目は6割以上で合格とボーダーラインは割合低め。つまり、合格のためには「広く、浅く」知識を身につけることが重要といえるでしょう。
試験本番に重要になってくるのは体調管理です。保育試験は2日間にわたって9科目を行う長丁場です。ただでさえ緊張しているの上でのこれはかなりのストレスとなり、疲労もたまります。それを防ぐためにも、お昼ご飯を用意してしっかり栄養をつけましょう。
おわりに
保育士資格試験は「6割の正答率」という数字がいうほど簡単な試験ではありません。でも、それはある意味当然なことでもあります。保育園という場所は子どもたちが最初に家族以外の「社会」というものに触れる場所でもあります。そこで働く保育士になるための試験には当然厳しい基準があってしかるべきでしょう。
でも、みなさんの保育士という仕事への情熱があれば長丁場の勉強も乗り越えられると確信しています。