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日本保育士問題を海外保育と比較して初めてわかる日本の政策

保育士 海外保育
日本と海外において、国や地方単位での保育所のとらえ方が大きく異なっています。今回は様々な国の保育のあり方を学んでみましょう。

今年2月、「保育園落ちた日本死ね!」と書かれた匿名ブログをめぐり、衆院予算委員会で子供を保育園に入れられなかった母親によるものとして話題になり、激論が交わされたのは記憶に新しいことです。

民主党の山尾志桜里氏が匿名ブログの内容を紹介し、国会で安倍首相に迫りました。首相は「匿名である以上、実際起こっているか確認しようがない」と述べ、この首相の発言に批判が殺到しました。しかし、この状況を受けて、政府は早急に財政案の立て直しに取り組み、保育士の給与を5%アップすることを発表しましたが、それでは足りないと民主・維新・共産など野党5党は月額5万円の引き上げ等を盛り込んだ法案を衆議院に提出しました。今回、国がここまで必要を迫られる保育の改革。何故このような問題になり、どうすれば良いのか他の国ではどうなっているか比較しながら紐解いていきましょう。

■日本と海外における保育所の取り組み方

日本と海外において、国や地方単位での保育所のとらえ方が大きく異なっています。

例えば、保育士の給料のための補助金が違う目的で使われてしまわないように、資格にあった賃金を保育士が得ているという証明がなければ保育所の補助金が出ない仕組みにしている国もあります。保育士がレベルアップして賃金も上がる仕組みがあれば、保育士になって働きたいという人が増えていきます。

他には、学校教育と同じで、すべての子供に『保育所に通う権利』を保障することを掲げている国があります。

ノルウェーの保育

例えばノルウェーでは、以前は1、2歳児を親が家で育てる場合、在宅育児手当といって保育所に配る補助金相当の手当が親に出ていました。しかし、親が家で面倒を見ることは、親子が地域で孤立することや、仕事をしないことで貧困に陥る可能性が高いことから、2009年からすべての子供に1歳から保育所に通う権利を保障しました。

イギリスの保育

イギリスでは、保育所に職業訓練機能をつけて、仕事をしていない親の就労を促す仕組みづくりも見られます。全員が毎日10時間以上子供を預けるのでなくて、週3回でも預ける場所を作り、保護者同士が繋がりコミュニケーションを取れるようになっています。子供を預けることをきっかけに親も仕事を得て、親が経済的且つ精神的に安定することで、国や地域に税金も納めることができ、子供も心身ともに安定します。保育所を、子供の預け先ではなく、家庭全体のみならず地域ごとサポートするための拠点になっています。

ドイツの保育

ドイツでも2013年から、1歳以上3歳未満の子供に保育を受ける権利が保障されました。保育所が、働く親のためでなく、子供にとって必要な施設という考え方で整備される動きがヨーロッパを中心に多くみられています。

韓国の保育

お隣の韓国では、以前は日本と同じく保育所を利用するには親の就労などの条件がありました。しかし、2004年に、親が働いていなくても保育所が使えるようになり、保育所の利用率が急上昇しました。子供を預けられるようになったことで、「時間を有効活用して働こう」という動きもあります。

■世界では親の働き方も見直されている

海外保育

海外では、多くの子供に保育所へのアクセスを保障していく一方、予算が膨張しないように、子供1人あたりの保育時間を見直すことに注力している国も増えています。

オランダの保育事情

例えば、オランダでは男女ともにパートタイム労働の割合が高く、両親いずれも週4日勤務にすることで、保育所の利用を週3日にするなど、働く時間を短くして、保育所を利用するのではなく親が子供と過ごす時間を長くしようという動きです。

ノルウェーの保育事情

ノルウェーのように、育児休業をとりやすくすることで、0歳児の保育は原則しない国もあります。

日本の保育事情

日本も国として、男性の育休などが少しずつ増えてきていますが、もっと現実的に保護者の労働時間の短縮や働き方の柔軟化、休暇の権利拡大を進める検討が必要な場面に直面しています。グローバル化が進む社会で、保育士、保育所のあり方、保護者の働き方に関しても日本は世界に早く追いついくために制度改革を急ピッチで行う必要があります。

■日本がお手本に目指すのは、フィンランドの医療・社会福祉資格「ラヒホイタヤ」

政府が今後の少子高齢化社会に向けて参考にしているのが、フィンランドが導入している「ラヒホイタヤ」と呼ばれる社会・保健医療の共通基礎資格です。

ラヒホイタヤ資格の前身10資格

【保健医療部門における7つの資格】

准看護婦、精神障害看護助手、歯科助手、保母・保育士、ペディケア士、リハビリ助手、救急救命士-救急運転手

【社会ケア部門における3つの資格】

知的障害福祉士、ホームヘルパー、日中保育士

フィンランドにおける施設ケアから在宅ケアへの政策転換や、在宅ケアにおいて「複数の介護者が入れ替わり立ち代わり来るのではなく、質の高い人に一貫して担当してほしい」という高齢者の要望を受けて、この資格が誕生しました。

上記7つの資格が1つの資格にまとまるというのは、相当な知識も必要になりますが、同時に資格取得ができれば活躍の場が一気に広がり、様々な場面で柔軟に対応できるということになります。

現在、厚生労働省では、フィンランドの医療・社会福祉資格「ラヒホイタヤ」を日本の現状を分析しながら、介護福祉士・保育士資格の取得方法について具体策の検討に入っています。新たに統一資格を設けるのではなく、介護福祉士・保育士の双方の資格を取得しやすくする方向で考えられており、具体的には保育士が介護福祉士試験を受ける際、あるいは介護福祉士が保育士試験を受ける際に一部の科目を免除するなどの案や、福祉分野の基礎研修の見直しなどが検討されているということで、日本独自の「ラヒホイタヤ」が生まれることが期待できそうです。

日本は何故、ラヒホイタヤを参考にしているのか?

日本でラヒホイタヤは、まだ検討段階で2025年を目標に動き出しているようです。なぜ2025年なのかというと、この年には戦後最大のベビーブームの申し子たち、いわゆる『団塊世代』の方々が75歳となり、本格的に大量の介護士が必要になるからです。概算では、介護に必要な人材が約33万人が足りないと言われています。また、現在でも保育に携わる人材も約7万人が不足している状態ですので、それならば保育のための人材を育てて、保育に関わる人材不足が落ち着いたら、そのまま介護の方へ人材をシフトしようという、世界が過去に例を見ない長寿国の未来を見据えた政府の戦略が読み取れます。

 ■日本における保育士不足の3つの大きな問題

1、過酷な労働条件と低賃金

厚生労働省によると、保育士の給与は平均約22万円で、全産業の平均は約33万円と発表されています。しかし、現実にはもっと低い賃金で働いている保育士がいることも事実です。制度的な要因として挙げられるのは、認可保育所の場合、基本的に公的な補助金と保護者が支払う保育料が財源となります。その保育料は公定価格で決まっているため、事業者側が勝手に定めることができません。公定価格は、1人の保育士が見る子供の人数が決まっていますが、実際にはそれでは子供の世話が対応できません。それにより、補助金か保育料を上げないと保育士の給料は上がらないというのが現状です。

また、様々な家庭の事情に対応して、保育士は子供だけでなく保護者への対応も重要な仕事のひとつです。午前7時台に始まり、午後8時以降もあいている保育園も増え、早朝や夜間、土曜日の勤務も増えています。子供の人数によって配置する保育士の人数が決まっているため、園によっては自由に休みを取得しにくいこともあるのがストレスになり、保育士を辞めていくという人もいます。

2、食物アレルギーなどの近代病

近年では食物アレルギーのある子供が増加傾向にあります。関西のある保育所では、2歳以下の70人のうち、9人が食物アレルギーです。ほかの子供がこぼした牛乳が、肌にはねただけで皮膚が腫れ上がってしまう子供もいます。そのため、アレルギーのある子供は、机を離して食事をさせるなど、工夫をしている保育所がたくさんあります。献立に関しても、保護者からアレルギーの内容を詳しく聞き取って決めています。

3、子供と遊ぶだけの仕事ではない

保育士の仕事は、「ただ子供と遊んでいるだけ」という見方をされがちですが、子供の成長に大きく関わり、その命を預かる非常に重要な仕事なのです。幼児期は人格形成で最も大切な時期と言われており、取り巻く人や環境に大いに左右されます。その中でも長時間一緒に過ごす保育士は、屋内外問わず、走り回ったり様々なことに興味を持つ子供たちを常に見守って安全を確保しなければならず、簡単なことではありません。心身ともに成長している最中の子供たちですので、大人同士のように常識が通じたり、話し合いで解決するなんてことはなく、何か問題が起きた時は親身になって子供の話を聞き、なぜその行為がダメだったのか、倫理観や道徳観も教えなければなりません。体力的にも精神的にもエネルギーを使う職業です。

■保育士の需要と将来性

厚生労働省の方針で子育て支援のための施策が実行され、待機児童をなくすための保育施設の拡充が進み、保育士のニーズが著しく高まっています。子供手当などの支援や、待機児童問題を解消するために必要となる約2800億円の財源は公共事業の削減などによって確保するという政府の予算見直しもあり、出産率の低下にも少しずつ改善が見られています。こうした国や地域をあげての子育て支援が保育士のさらなる需要を高めていっています。

■今後の日本の保育事情

現在、グローバル化が加速する社会に対応して、日本では海外の制度を参考に保育現場の改善が早急に進められています。日本も先進国として、海外の柔軟な制度に早く追いつき、日本の切なる保育事情の問題が改善されなければならない状況に直面しています。「保育園落ちた日本死ね!」と書かれた匿名ブログをきっかけに、徐々に国が動き出していますが、ブログを書いた方のみならず、声には出さずとも同じ悩みを抱え、苦しんでいる方が多くいることは間違いないでしょう。子供は日本の将来を担っている重要な存在です。各党が提出している5万円の給与引き上げのみでは保育士不足の問題解決には不充分ですが、無駄な経費を削減し、保育に関する前向きな政策と厳しい現状を政府が真摯に受け止めて建設的な議論が交わされ政策が迅速に施行されていくことに期待したいものです。

 

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