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母子関係が子どもの心に与える影響って?見つめなおされる「マザリング」の大切さ

マザリング
親子の触れ合いを大切にしていますか。それはあらゆる形で子供に影響をもたらすようです。

マザリング

 

女性の社会進出が進み、保育へのニーズが高まる昨今。ですがその一方で、親子のスキンシップの時間が奪われてしまいがちになってしまうという課題も浮き彫りになっているという現実があります。そこで今見つめなおされているのが「マザリング」と呼ばれる、母親(養育者)から子どもへの愛情行動。マザリングとはいったいどんなものなのか、なぜ大切さが見つめなおされているのかご紹介します。

 マザリングっていったいなに?

ひとくちに「育児」といっても、ミルクを与えたり、おむつを交換したり…と赤ちゃんの身の回りのお世話をすることだけが育児ではありません。泣いている赤ちゃんをあやしたり、身の回りのお世話をしながら話しかけたり…と愛情たっぷりのスキンシップをはかることも、大切な育児行動のひとつです。このように、母親(養育者)が我が子に対して、愛情をかけて接する育児行動のことをマザリング(mothering)といいます。

初めて育児をするという人のなかには、赤ちゃんに語りかけることが照れくさく感じてしまう人もいるかもしれません。生まれたばかりの赤ちゃんは、いくら語りかけたとしても、うまく反応を返すことができません。表情もはっきりしないため、つい無言になってしまったり、無表情でお世話をしてしまったり…という人もいるのではないでしょうか。
ですが、赤ちゃんにとって、母子のふれあいはとても大切な時間なのです。

 赤ちゃんが生きていくためには「愛情」が不可欠

ミルクをあげたり、排泄のお世話をしたり…といった作業的な育児では赤ちゃんが健全に育っていけないということを明らかにした実験がありました。アメリカの心理学者ハーロウが1950年ごろに行ったマカクザル飼育実験です。
マカクザルの人工繁殖を試みていたハーロウは、伝染病の蔓延を防ぐため、マカクザルを一匹ずつ、衛生管理されたケージのなかで飼育していました。その過程でハーロウは、生まれたばかりのサルを単独で飼育すると、生後五日以内に亡くなってしまうことが多い一方で、布でおおった針金の人形「代理母」を入れることで生きるようになることを発見したのです。
たとえ衛生的な環境で飼育されたとしても、身体的な接触による安心感がなければ生きていけないことを表しています。
さらにハーロウは、仔ザルのケージに針金でできたほ乳瓶つきの人形と、布でおおわれたほ乳瓶のない人形を入れておく実験を行いました。すると仔ザルは、ミルクを飲むとき以外は、ほとんどの時間を布でおおわれた人形にしがみついて過ごしたのです。この実験により、赤ちゃんが母親に抱く愛着は、ミルクをくれるからではなく、ふれあいのためであることが明らかになりました。

それから、自身が母親に育てられることがなかったメスザルが出産した場合、自分の仔を拒絶し、うまく育児をすることができないことも明らかになっています。
これらのマカクザルの実験は、乳幼児期の母子とのかかわり(マザリング)がいかに大切なものかが証明されるような結果となりました。

※このような実験はサルの母子にも心理的負担が大きいため、動物愛護の観点から現在では行われなくなっています。

マザリングが健全なこころを育んでいく

 

マザリング

 

人間の場合も同じく、マザリングは子どもたちの健全な心の発達に欠かせないものです。母子のふれあいは、対人関係の基礎をつくってくれるといわれています。マザリングが不足していたり、不適切なマザリングが行われていたりすると、乳幼児の情緒発達や人格の発達に影響をおよぼす恐れがあると考えられています。

母親以外が育児をする「アロマザリング」というかたち

マザリングに対して「アロマザリング(allomathering)」という言葉があります。これは母親以外(allo)が育児を行うというものです。動物の多くは、出産をした母親が中心となって子育てを行いますが、なかには母親以外が育児を引き受けたり、コミュニティをつくり、集団で子育てを行ったりする動物もいます。わたしたちヒトも、その一種です。哺乳類のほかの動物と比較すると、ヒトの赤ちゃんは行動的にとても未熟な状態で生まれ、親の養育を受ける期間も長い生き物。だからこそ、ヒトにとって、アロマザリングは欠かせないものです。

かつて日本では、祖父母や曾祖父母など多世代にわたる家族が同居・近居していました。そのため、初めて育児をする場合であっても、周囲に育児経験者がたくさんいるという、まさに、自然とアロマザリングが成立している環境にあったのです。ところが核家族化が進む近年では、子育ての孤独化が社会問題となっています。頼れる家族が身近に住んでおらず、近隣住民との関係も希薄になりがち。さらに女性の社会進出が進むいま、マザリングにかけられる時間もガクッと減ってしまっているのが実情ではないでしょうか。

今、考えたいアロマザリングのこと

現代の日本の場合、もっとも代表的なアロマザリングのかたちは、保育園かもしれません。専門家のなかには、幼いうちに母親(養育者)のもとを離れて過ごすことに関して、否定的な声をあげる人も少なからずいます。ですがその一方で、保育現場をアロマザリングの場ととらえ、保育士がきちんと愛情をもって接することで、子どもたちを健全に育てていくことができると考える人もいます。
また近年では、ひとりの保育士が決まった子どもをみる「担当制保育」を実施する園も増えています。特に乳幼児クラス(0~2歳児)に多い保育のかたちで、保育士ごとに担当する子どもを決め、個を尊重した育児を行う担当制保育は、マザリングに近い保育のかたちです。子どもたちは、いつも同じ保育士からミルクを与えられ、おむつを替えてもらい、たくさんスキンシップをはかるなかで、保育士との信頼関係を築いていきます。

マザリングも、アロマザリングも大切にしたい
母子のスキンシップが子どもの健全な心を育むというマザリングの考え方と、他者が育児を引き受けるというアロマザリングの考え方。それぞれ賛否がありますが、マザリングの考え方に賛同し、家庭での育児の時間を大切にすること、そアロマザリングの考え方に賛同し、周囲を協力しあって子どもを育てていくこと。いずれも大切にしていきたい考え方なのではないでしょうか。保育園に預ける場合であっても、家庭でのふれあいを大切にしたり、家庭内で育児をする場合でも、上手に周囲を頼り、抱え込まないようにしたり…と、うまくバランスをとりながら、子どもたちと関わっていきたいものですね。

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