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異年齢保育 - 保育園と老人ホームの併設

保育士 異年齢保育
保育施設と介護施設の併設は、よく見かける話となりました。こちらは、一体、どのような効果があるのでしょうか。

少子化とともに今の日本が立ち向かう大きな問題といえば高齢化です。現在の日本はおよそ3人に1人が60歳以上の高齢者という高齢化社会に突入しており、その数はこれからも増え続けていくと予想されています。

対象となる人の年齢は違えど、保育園も老人ホームも人の命と人生を預かる福祉施設であることには変わりません。事実、同じ社会福祉法人が保育園と老人ホームの両方を運営しているということもごく一般的です。

そんな中、近年保育園と老人ホームを併設した施設が数多く作られるようになってきました。さらに、同じ敷地内の老人ホームなどがない場合にも、系列の社会福祉法人が運営する高齢者福祉施設を園児が訪問するという保育を行っている保育園が多くあります。

今回は、そんな幼児と高齢者が接することのメリットについて紹介していきたいと思います。

幼児が高齢者と触れ合うことにメリット

なぜ?歴史と現状

一昔前は、といっても時代は戦前くらいまでさかのぼらないといけませんが、家族には今と比べてたくさんの人がいました。お父さん、お母さん、たくさんの兄弟姉妹、そしておじいちゃん、おばあちゃん。子どもたちは自然の家庭の中で、自分より年上だったり、年下だったりする人たちが常に周りにいる環境です。

さらに、近所を見渡せば隣のおじさんや、近所の高校生のお兄ちゃんお姉ちゃんと実に様々な人と接する機会がありました。アニメ、「サザエさん」を想像してもらえるとわかりやすいでしょう。

しかし、戦後、高度経済成長とともに核家族化が進みます。家族はだんだんと小さくなり家にいる大人は両親だけ、そして兄弟の数もだんだんと少なくなり、1人っ子家庭ももはや珍しいものではありません。自分のおじいちゃんおばあちゃんに会うのも年に1~2回という子どもたちももはや普通です。

さらに近所づきあいも希薄になる中子どもたちが自分たちと異なる人と接する機会はますます限られるようになりました。

このような事態は子どもたちの成長にとって好ましいことではありません。子どもたちは多種多様な人たちとの触れ合いを通して、感性を磨いていきます。ご存知の通り、子どもたちは非常に飽きっぽい。マンネリ化した日々を送っていればチャレンジすることをやめてしまいます。

しかし、飽きっぽいというのは裏を返せばそれだけ新しいものに興味を持てるということ。だからこそ子どもたちを普段のものとはちょっと違った環境に置いてあげるということは大きな意味を持ちます。

そして、その一環として高齢者と接するという機会を設けている園が多いのです。

高齢者との異年齢保育

 

高齢者との異年齢保育は定期的に園児が近隣の老人ホームを訪れるという形で始まりました。先ほども述べたように、同じ社会福祉法人が保育園と老人ホーム・デーサービスを運営していることも多いため、同じ系列の施設を訪問するというパターンが多くみられます。

当初はこのように遠足などのイベントのような形で老人ホームの訪問を行っている園が多かったのですが、近年これよりもう一歩先に進んだ高齢者との異年齢保育を行っている園がみられるようになりました。

園児がわざわざ老人ホームを訪問するのではなく、そもそも保育園と老人ホームが同じ敷地内にあるという施設も多くあります。1階が保育所で2回が老人ホーム。まさに一つ屋根の下で生活するという感覚です。

この幼児と高齢者のふれあいは高齢者の側にもメリットがあります。

老人ホームに入っている高齢者の多くが孤独などの精神的ストレスを抱えています。自分では何もできない無力感。単調な毎日。若い頃、バリバリ仕事をしていた人ほどそのプライドが邪魔をして殻に引きこもってしまう傾向があります。

小さな子どもたちと接することはそのような高齢者にとっての心の癒しになっている面もあるといえるでしょう。

高齢者との異年齢保育の事例

では、実際にどのように園児と高齢者の触れいあいが行われているのかを見ていきましょう。今回は実例として2つの社会福祉法人を紹介していきたいと思います。

社会福祉法人 江東園

アメリカ・ワシントン州シアトルにProvidence Mount St. Vincentという老人ホームがあります。この老人ホームにはThe Intergenerational Learning Centerという保育園が併設されています。

平均年齢92歳、400人の高齢者と乳児から5歳までの子どもたち125人が同じ施設内と週5日生活しています。

実はこの施設のモデルになったのは日本の施設。

社会福祉法人江東園は1962年に住むところのない高齢者が安心して住める終の棲家をつくるために養護老人ホームとして設立。その後、1976年には江戸川保育園を設立しました。

そして、1987年には養護老人ホーム、保育園、特別養護老人ホーム、高齢者住宅サービスという4つの施設を同じ敷地内に持つ「幼老統合施設」を建設しました。これが、現在に至る幼児と高齢者の触れいあいにおける先駆けともいえる施設でしょう。

社会福祉法人 ユーカリ優都会

もう1つは千葉県佐倉市ユーカリが丘にある「社会福祉法人ユーカリ優都会」です。緑に囲まれた環境の中に、介護老人保健施設、介護付有料老人ホーム、グループホームと学童保育所が合わさった施設、の計3つの施設からなる大型複合福祉施設を運営しています。

さらに敷地内にはグラウンドゴルフ場、ヤギなどとの動物に触れ合える「ふれあい広場」、子どもたちが思い切り走り回れる広場、春と秋には満開の花がみられる花畑、野菜の裁判体験施設など四季折々の自然を満喫できる設備が整っています。

実は佐倉市は「福祉の街」を掲げており、福祉に非常に力を入れている自治体です。この施設もその事業の一環として行われています。

ユーカリが丘は元々「山万」という不動産会社が1970年代に開発したいわゆるニュータウン。その当時に結婚子育て世代に当たる人たちが夢のマイホームを求めてこぞって流入してきました。そのため、必然的に高齢化は避けては通れない問題です。

しかし、同時期に開発されたほかのニュータウンが人口減少に悩む中、ユーカリが丘は年々着実に人口の伸びを見せています。実は、50年以上も前から高齢化を見越し、それを念頭に置いた街づくりをしてきました。

例えば、毎年の分譲件数を制限し、毎年コンスタントに若い世代を流入させることによって人口の世代間の偏りをなくしています。

学童保育と高齢者介護施設を併設した「多世代交流施設」には学校が終わる時間になると子どもたちが「ただいま」という声とともにやってきます。そして、施設の高齢者はそれを「お帰り」という言葉で迎えます。

施設での子どもたちと高齢者との触れ合いはいたって自然。この触れ合いが生活の一部と化していることがうかがえます。

この触れ合いが子どもたちにとっても、高齢者にとっても日常にスパイスになっていることは間違いありません。さらに、この交流との因果関係はまだ不明ですが、徘徊や暴言といった認知症の周辺症状の悪化が抑えられているという話もあります。

最後に

このように、小さな子どもたちと高齢者が触れ合える施設はこれからの増々増えていき、新しい保育・高齢者介護の形となっていくのではないでしょうか。

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